うちなー美味(まーさん)肉紀行 沖縄の美味(まーさん)肉を知る、味わう

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美味(まーさん)肉ガイド

御膳本草と沖縄の養生食について

沖縄の養生食について

沖縄には、古くから「医食同源」・「薬食同源」という考え方や慣習があります。
食事は、生命を養い健康を保つだけでなく、病気を治す薬の役割を果たすという、食生活に対する意識を示しています。

養生とは「生命を養うことであり、健康の増進をはかること」と辞典に記されています。
養生食とは、まさに健康を維持し増進する食べ物を意味します。

養生食は、古くから人間の貴重な体験によって生み出されたものであり、それには十分な科学的な裏付けはないかもしれませんが、食品素材の組み合わせ方やそれらの取り扱い方に先人たちのいろいろなすばらしい知恵をみることができます。


栄養バランスに優れた足ティビチ(写真上)
と島人参を使った鶏肉のお汁(写真下)
沖縄のお年寄りが人をもてなすとき、「これは滋養(栄養)になるよ」とか「これは身体にいいから・・」「クンチ(根気・元気)がつくから」と効用を説きながら食べ物をすすめます。また、必ずと言っていいほど、食べ物について「ウジニー(補い・補益)」とか「クスイムン(薬になるもの)」という表現をします。口にする食べ物はすべて薬(単なる薬ではなく、滋養強壮の意味も含む)という考え方です。

干ばつや台風などの自然災害にたびたび見舞われた沖縄では、古くから薬餌効果を優先する「養生食」が食の知恵として生み出され、育まれました。これらは日常の生活に密着したもので、食品素材の組み合わせ方や野草・薬草を巧みに取り入れるなど、多様な工夫と知恵の結晶をみることができます。

どうして沖縄で養生食がひろまったのでしょうか・・

沖縄の養生食が中国と大和(日本)の影響を受けながらも、沖縄独特の養生食として日常一般化したのは、食に対する宗教的禁制がほとんどなく、食するものに偏見や差別の意識を持たなかったことにもよると思います。
そもそも、沖縄の養生食の起源は、古代中国における食療本草系にさかのぼります。
中国漢方の中に見る医師の属官序列は食医、疾医、瘍医、獣医の順となっており栄養管理や食事療法を担当する医師が上位で、次いで内科医、外科医となっていることから、いかに昔の中国人が食生活を重要視していたかがよくわかります。

御膳本草
御膳本草
左記の本は、沖縄唯一の本草書である「御膳本草」(ぎょぜんほんぞう)です。
渡嘉敷親雲上通寛(とかしき ぺーちん つうかん)(1794~1849)が、1832年(天保3年)に編纂し、王府へ献呈したものです。
※本草学(ほんぞうがく)とは、中国で発達した医薬に関する学問です。

「御膳本草」(ぎょぜんほんぞう)をひもとくと、沖縄の養生食が中国の食療養生思想の影響を大きく受けていることがよくわかります。沖縄産あるいは沖縄で手に入る食材を16項目に分類し、308品目を取り上げています。
渡嘉敷親雲上通寛は、1817年(嘉慶22年)23歳のときに中国北京へ留学、北京大医院で中国の食医学の権威である張垣に学び、その後、琉球王府の侍医頭となりました。1824年(道光4年)には再び北京へ留学し、北京大学医院長の張水清に師事、再び沖縄に戻り王家の方々の治療にあたりました。当時の病弱であった王第17代尚轣揄、(しょうこうおう)の治療にあたったと言われています。

また、「御膳本草」が書かれた時代1832年(天保3年)は、天保の大飢饉であったため、本来、王府でしか生かされない御膳本草の知識が、当時の医師達を介して庶民の間にひろまったものと考えられています。

沖縄の代表的な養生食


レバーの煎じ汁(チムシンジ)
沖縄の養生食には四つの大きな特徴が見られます。
一番目は、「煎じること」です。
沖縄には「シンジグスイ」というものがあります。
これは煎じ薬の意味で、漢方にみる食品を煎じることです。「煎じる」という意味は、水などで煮て、その成分をしみださせて、その煎じた汁を煎汁あるいは湯液といってこれを飲むことです。


島人参(チデェークニ)
二番目は、「巧みな食材の組み合わせ方」です。
シンジには独特の食品の組み合わせがあり、食材の組み合わせを工夫して、それぞれの栄養成分をうまくひき出し、吸収を高めるようにしています。現在でも広く普及しているものに「チムシンジ」があります。これは、チム(豚の肝臓、いわゆるレバー)と島にんじんやニンニクなどを煎じて、その汁を病人にのませます。疲れやだるさ、万病に効くとして今でも多くの人が口にしていますが、栄養学的にも納得できるものです。特にお年寄りは、黄色でごぼうのような形状の島にんじん(チデェークニ)でなければ効き目はないといいます。

その他、クーイユ(鯉)やターイユ(鮒)などの淡水魚をにがな(ホソワバダン)と煎じるシンジがあります。
このように、一つの食品ではなく、いくつかの食品を巧みに組み合わせて煎じ、そのエキスを飲食するという方法は、個々の食品に含まれる栄養成分や特殊成分の相乗効果を生み出すという面からも重要ではないかと思います。
特に栄養状態があまりよくなかった当時の食生活で、タンパク栄養におけるアミノ酸の補足効果や、微量な特殊成分などによる栄養と薬用の相乗効果を狙った点では、養生食の優れた特徴と言えます。


ういきょう(イーチョーバー)
三番目は、「身近にある豊富な薬草」(地場野菜)
沖縄の養生食が漢方薬局で取り扱っているような特別な生薬を使用しているのではなく、薬草の宝庫といわれる沖縄で、身近にある食材を組み合わせて日常的に食事として摂取しているということです。
例えば、イーチョーバー(ういきょう 咳止めや風邪の発汗、健胃に効果あり)、ハマグンボー(浜ごぼう 痛風、高血圧や感冒の解熱に効果あり)、クスミクチン(腎臓病の特効薬)、クヮンソウ(不眠に効果あり)、ハンダマ(すいぜんじ菜 貧血への効用)チョーミーグサ(長命草 気管支系の病気に効く)等々、多種多様の野草、薬草が日常的に用いられています。


四番目は、「以類補類」です。
中国漢方の影響を色濃く残しているものとして「以類補類」があります。
所謂、類を以って、類を補うといい、動物(豚)の組織や器官で、それに類した人体の組織、器官を補うことができるという考え方です。すなわち、人の悪くなっているところと同じ豚の部位を食べて治すと言う食事療法です。

沖縄の豚肉食文化には、単に豚肉を食すというのではなく、豚の耳、面皮、肋骨、胃腸、肺臓、肝臓、すい臓、腎臓などを含む内臓と足・脚まで巧みに利用するというところにあります。
それらは、漢方の技術に示されているように、煎じることによって薬効を生じ、健康に生かされています。

しかし昨今、沖縄は長寿県ではなくなりつつあります。
その要因は、食文化が多様化したこと、車社会がために運動不足になりがちであること、核家族化によって伝統料理の継承が困難になってきたこと、「清明祭(ウシーミー)」などの行事が簡素化してきたこと、共働きで時間に追われているために、調理時間を短縮せざるを得ないことなど様々です。
まさに今、古き良き食事や慣習を見直すべきではないでしょうか。

出典:尚 弘子 著
  「暮らしの中の栄養学」沖縄型食生活と長寿

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