うちなー美味(まーさん)肉紀行 沖縄の美味(まーさん)肉を知る、味わう

  • 美味(まーさん)肉ガイド
  • 御膳本草(ぎょぜんほんぞう)
  • 食事
  • 生産者(カラヤー)の声
  • インタビュー
  • 市場
  • うちなーおばぁレシピ
  • レシピ
  • まーさんレシピ冊子
  • お土産
  • イベント

ホーム > インタビュー > 国際中医薬膳師/栄養士 宮國由紀江さん

インタビュー

国際中医薬膳師/栄養士 宮國由紀江さん —食肉×薬膳

昔ながらの知恵と、外国との交流が生み出した、沖縄の食文化

沖 膳とは、数千年にわたる歴史の中で、皇帝の健康を守るために確立された中国の伝統医学、つまり「中医学」に基づく食療法のことです。薬膳では、すべての食材に効能があると考え、生薬(漢方薬)と食物は本質的に同じものとしてとらえます。そして、あらゆる食材を「五性・五味」に分類し、その人の体調に合わせ、足りないものを補って、バランスをとるのです。「五性」とは温度に関わる性質のことで、「寒」「涼」「平」「温」「熱」に分かれ、寒の食材は体を冷やし、「熱」の食材は体を温めるとされています。「五味」とは味に関わる性質のことで、「酸(すっぱい)」「苦(にがい)」「甘(あまい)」「辛(からい)」「鹹(しおからい)」に分かれ、「酸」は引き締めて流出を抑える作用、「苦」は余分なものを取り去る作用、「甘」は気や血を補い、体の緊張を緩める作用、「辛」は発散させる作用、「鹹」は固くなったものをほぐす作用があるとされます。

 たとえば、豚肉は「平」なので、体に刺激を与えず、誰にでも合う、体に優しい食材です。しかし、同じ豚でも、レバーは「温」、チラガー(顔の皮)やミミガー(耳の皮)は「涼」、胃は「温」、腸は「微寒」の性質を持つため、様々な部位を食べ合わせることで中和させます。ですから、沖縄の郷土料理である中身汁に胃と腸が両方とも使われていることは、とてもいいバランスのとり方なのです。また、薬効の例をあげると、「補血」の効能を持つティビチ(豚足)は母乳の分泌を促し、同じく「補血」の力を持つソーキ(スペアリブ)は「涼」の性質を持つ昆布や冬瓜と一緒に汁物にすると熱を冷まし、背骨を煎じた汁はホルモンのバランスを整えてくれるので更年期には特におすすめ。骨ごと煮込むこれらの料理は、精をつけるといわれ、沖縄の食堂などで人気の骨汁も、スタミナをつけたいときには最適なメニューです。

肉各種  牛肉は「温」の性質と「補血」の効能を持ち、血のめぐりを改善します。特に、牛スジと呼ばれる部分は、骨や筋を丈夫にする効能があり、赤ワインやプルーンなど「補血」の作用を持つ食材と一緒に煮込みなどにすると効果的です。タン(舌)は「寒」の性質なので、しょうがなど「温」の食材と合わせます。
 鶏肉は「温」の性質で、気力や体力、エネルギーを回復させる「補気」の効果を持つ食材です。体が弱っているときには、丸ごと1羽を煮込んだスープがおすすめです。同じく「補気」の効果を持つ山いも、じゃがいも、島にんじんなどと一緒に煮込めば、さらに回復効果が高まります。
 鶏卵もすぐれた薬効を持つ食材です。生のまま食べると、より栄養の吸収がよいとされ、卵酒には安眠効果があるといわれます。「補血」の効能があり、貧血気味の方、更年期や閉経後の女性には特におすすめ。「補気」の効果を持つ豆類、いも類、穀類、にんじんなどと相性がよいので、にんじんシリシリーは非常に理に適った調理法です。とりわけ烏骨鶏(うこっけい)の卵は滋養強壮効果が高いといわれ、私も健康のために愛用しています。

 こうして薬膳の視点から畜産品を見直してみると、沖縄の伝統的な料理には、薬膳の知識が生かされていることがよく分かります。たとえば、貧血や滋養強壮によいとされる「チムシンジ」には、豚のレバーとグーヤヌジー(前脚の付け根の赤身肉)に島にんじんを必ず一緒に使いますが、「補血」のレバーだけでは吸収にしくい栄養素を、「補気」の食材である赤身肉のグーヤヌジーや島にんじんと合わせることで、吸収を高める組み合わせになっているのです。

国際中医薬膳師/栄養士 宮國由紀江さん(イメージ)  こうした昔ながらの知恵や工夫のルーツは、中国から伝来した食事療法の知識にあります。琉球王朝時代、王の健康を支えるため、第十七代琉球王の命を受けて、琉球王府の侍医頭だった渡嘉敷親雲上通寛(とかしきペーちんつうかん)が中国・北京の大医院に留学し、帰国後の1832年、王に献上するために「御前本草」という食医学書を上梓しました。この「御前本草」(ぎょぜんほんぞう)には、王の食卓に供するための食材303品目が取り上げられ、それぞれの薬効や治療法、食べ合わせ、調理法などが記されています。その知識はやがて医師から民間へと広まり、おばぁの知恵として大切に受け継がれていったのです。
 薬膳というと、漢方薬のようなイメージを持つ方もいらっしゃいますが、私は沖縄で簡単に手に入る身近な食材を使った手軽でおいしい薬膳メニューを提案しています。沖縄に伝わるクスイムン(薬になるもの)という考え方を大切に、毎日の食生活に生かせるような薬膳の情報をこれからもお届けできればと思います。

伊是名カエさんプロフィール

栄養士として11年間、総合病院に勤務した経験から、健康を支える食生活を模索するうちに、中国の伝統医学に基づく薬膳と出会い、国際中医薬膳師の資格を取得。
薬膳教室を主宰するかたわら、沖縄の食材を用いた琉球薬膳食を提案。現在、国際中医師を目指し、国立北京中医薬大学日本校にて勉強中。
著書「からだの調子を整える美味しい琉球薬膳食」が人気。

「インタビュー」トップに戻る

ページの先頭へ戻る

財団法人 沖縄県畜産振興公社

Copyright©All Rights Reserved. Okinawa Prefectural Livestock Industry Promotion Foundation