> 生産者(カラヤー)の声 > 農業生産法人(有)我那覇畜産:我那覇 明さん
「ウチナーンチュ(沖縄人)にとって豚は特別な存在」と語るのは、アグーの血をひくこだわりのアグーブランド豚を生産している我那覇明さん。豚を育てて50年になるという我那覇さんにとってもアグーは別格の存在なのだそうです。
沖縄県アグーブランド豚推進協議会では、アグーブランド豚の認定条件を「アグーの血を50%以上有すること」と定めています。
「純血のアグー同士で繁殖させるだけでは、肉として出荷するには余りにも少ない。だから、アグーの肉質を生かしながら、生産性を高めて、すぐれた品質の肉を生み出すために、アグーブランド豚の生産者はそれぞれに工夫して西洋品種と交配させているんですよ。
うちでは、脂身が多いけれど旨味成分の濃いアグーに、ロース部分にサシ(霜降り)が入りやすいデュロック種や、黒豚で赤身がきめ細かいバークシャー種を交配させています。それぞれの特性を生かして、美味しい肉に仕上がっていますよ」と我那覇さん。そして、アグーの血を受け継ぐ豚を育てるにあたって、なによりも豚の健康を第一に配慮しているといいます。
「この農場は、やんばるの森の真ん中で、周囲に他の養豚場や養鶏場、牧場などがないでしょう?これは、他からの万が一の感染を防いでくれる、最高の環境なんです。飼料にもこだわって、天然カルシウムの与那国島産化石サンゴ、沖縄県産の糖蜜やビール酵母などを配合しています。通常の飼料に比べると費用はかかりますが、豚の健康のためだから」と語る我那覇さん。おすすめの食べ方は「しゃぶしゃぶ」とのこと。臭みがなく、しっとりと柔らかな赤身の部分と、脂身の旨味を堪能するには、この食べ方が一番なのだと教えてくださいました。
続いて、農場長の兼次(かねし)邦浩さんに、豚舎を案内していただきました。
「豚は人と同じように体調をくずすことがあります。」と兼次さん。風邪を引かないように、お腹をこわさないようにと豚を気遣う様子は、まるでわが子を見守る親のよう。
全身を覆う黒々とした太く長い剛毛、垂れた耳、反り気味に湾曲した背中、副蹄で大地を踏みしめる短い足。そんなアグーの特徴を受け継ぐ豚たちは、黒豚もいれば、白い肌に黒い斑点を持つ豚も。共通しているのは、とにかく好奇心旺盛なこと。豚舎に足を踏み入れたとたん、取材スタッフやカメラマンは豚に取り囲まれ、カメラを向ければ一目散に集まってきて、やじ馬ならぬ、やじ豚状態。「これも健康な証拠なんですよ」と兼次さんは笑います。
分娩部屋と呼ばれる一室には、出産を間近に控えた母豚や、産後間もない豚の母子がいました。昨日産まれたばかりという小さな子豚たちの愛らしいこと!もうすぐ離乳を迎えるという生後3週間ほどの子豚たちは、元気に母豚の周囲を走り回っていました。「西洋品種は一度に10~12頭産みます。アグーは5頭。西洋品種と交配したアグーブランド豚は7~9頭ほど産みますが、みんな安産ですね」。兼次さんの腕に抱かれた子豚は、母豚から離された当初は鳴き立てていたものの、いつの間にか安心しきってウトウト。清流せせらぐ、やんばるの緑あふれる山の中、こうして愛情を注がれながら、アグーの血を引く豚は心身ともに健やかに育てられていました。