> 生産者(カラヤー)の声 > 嘉数ファーム 嘉数美代子さん・雅人さん親子
豚肉王国・沖縄において、昨今、注目を集めている新たなブランド豚肉があります。それは糸満にある嘉数ファームで生産されている「甘熟豚」。子豚の生産から肥育、出荷までを一貫して行っており、ランドレースと大ヨークをかけ合わせたLWと呼ばれる母豚に、デュロックの雄をかけ合わせて誕生したLDWという三元豚を、生後7ヶ月以上の長期飼育し、出荷しています。甘熟豚はその名の通り、甘みを感じるほど旨味豊かな味わいが特長。代表の嘉数美代子さんと息子の雅人さんにお話を伺い、さっそく農場を案内していただきました。
「ここ糸満農場では現在5名のスタッフが約2,000頭を肥育していて、年間約3,600頭の甘熟豚を出荷。子豚の生産専門の玉城農場の方では2名のスタッフが約1,000頭を育て、年間約2,000頭を出荷しています」。
広い敷地の中には、母豚と生後25日目までの子豚がともに過ごす分娩舎、生後26日目から70日目までの子豚専用の離乳舎、生後71日 目から出荷までの豚を育てる肥育舎があり、それぞれの通路には消毒液が設置され、特に分娩舎への立ち入りには専用の長靴に履き替えるという、厳しい衛生管 理ルールが守られていました。私たち取材スタッフも、消毒された長靴はもちろん、頭まですっぽりと覆うフード付きの防疫つなぎ服とマスクを着用して、豚舎に入ります。
「3日前に生まれたばかりの子豚です。かわいいでしょう?」と雅人さん。思わず「飼ってみたい!」と目を細める取材スタッフに、「今は子犬サイズですけど、半年後には110キロですよ」と笑顔で一言。30度に保たれた快適な室内で、母豚の乳首を奪い合うようにして乳を飲む子豚たちの中には、競争に負けてありつけない子豚もいるそうです。そんな子豚の救世主が代用乳なのだとか。
「このドーナツ状の容器に入っているのが、人間でいえば粉ミルクにあたる代用乳です。母乳だけでは足りない子豚も、これなら自由に飲めるので、個体差が出にくくなりました」。
次に案内してもらった離乳舎では、「ウェットフィーダー」という初めて見る飼料容器に出会いました。「マシンガンフィーダー」とも呼ばれている給餌器です。中央のタンクに飼料を入れ、飲み水は水道管から接続。一度に8頭から10頭の豚が欲しいときにいつでも飼料も水も摂ることができるのだそうで、離乳舎をはじめ肥育舎の方も、この春、新型の給餌器を導入したばかり。というのも、従来の配合飼料から「クランブル飼料」という最新の飼料に切り替えたから。
「このクランブル飼料は、加熱処理加工されていて、おいしそうな香ばしい匂いがするんですよ。消化吸収がいいので、排泄物が少なくなり、環境を考える上で もすぐれた飼料だと思います。なにより健康的な肉付きに太るのがいいですね」。
最後に案内された肥育舎では、丸々と肥えた豚が、鼻先で器用にウェット フィーダーを操作し、飼料を食べていました。その肥育舎は現在、おが粉床へ改修中。従来のコンクリート床とは異なり、おが粉が排泄物を吸収するため、汚水の排出が減り、脱臭効果により臭気も軽減されるなど、メリットが大きいとのこと。
「こんな風に、次々と新しい工夫に取り組み始めたきっかけは、昨年の大型台風による被害でした。豚舎の屋根が暴風で飛ばされて、もう養豚業を諦めようかと さえ思いました。でも、父が遺し、母が守ってきたこの農場を、このまま失くしたくないと思ったんです」。ならばと思い切って、守りから攻めに転じる決意 を固め、飼料や給餌システムを一新、飼育環境の改修などに取り組み始めたのだそうです。
父の幸三郎さんが46歳という若さでこの世を去って21年。息子の雅人さんが母・美代子さんとともに手塩にかけた甘熟豚は、沖縄が誇るブランド豚肉の一つとして数えられるほどになりました。
「甘熟豚をぜひ一度、しゃぶしゃぶで食べてみてください。肉の甘みとコクがよく分かりますよ」。
(ご紹介いたしました)うまみの詰まった「甘熟豚」は、沖縄県内の大手スーパー、リウボウグループにてお買い求めいただけます。