> 生産者(カラヤー)の声 > JA宮古肥育センター:翁長一文さん・砂川弘信さん・池原広晃さん
「今ここで肥育している牛の約1割が北福波の子です」と教えてくれたのは、JA宮古肥育センターで農場長を務める砂川弘信さん。海からの潮風が吹き抜ける高台にある6棟の牛舎では、300頭を越える牛たちがのんびりと餌を食んでいます。
北福波、それは、この宮古島で生まれた、沖縄の最高傑作と称される種雄牛。和牛の美味しさの決め手は血統と育て方にあり、黒毛和牛はすべて、人の戸籍のように、その血統をたどることができます。
上質な肉を生産するためには、優れた肉質をもつ血統の母牛と父牛が必須で、繁殖は人工授精で行われ、優秀な種雄牛は非常に大切に扱われます。
とりわけ宮古島生まれの北福波は最上級のA5クラスの肉質の牛を数々誕生させたという素晴らしい実績を誇り、沖縄県の肉用牛改良にも大きな貢献を果たしています。
宮古島では、従来は子牛を生産する繁殖が主流でしたが、15年ほど前からは、宮古島生まれの子牛を島内で育てて上質な宮古牛を出荷する肥育にも力を注いでいます。
「現在、宮古牛を肥育しているのは、ここだけ。宮古と隣の多良間島の家畜市場から生後8~9カ月の素牛(子牛)を仕入れ、20~21ヶ月間ほど肥育し、年間160~200頭を出荷しています」
と砂川さん。
さっそく牛舎の中を案内していただきました。
「朝はまず牛の体調チェック。1頭1頭の様子を見て、餌の食べ残しも確認します。牛だって、風邪も引けば、お腹もこわす。そんなときはビタミン剤を与えたり、獣医さんに診てもらいます。人間と同じですね」。おきなわ和牛専用の統一配合飼料に牧草を混ぜた餌を1日2回与え、いつでも新鮮な水が飲めるウォーターカップをセット。
巨大なキャラメルのようなものをなめている牛がいたので、たずねてみると、尿石症を防ぐ効果のある固形塩なのだそうです。
牛の肥育で大切なのは、ストレスをかけないこと。ストレスは体調を崩す原因になるほか、肉質にも影響するので、牛舎の環境整備もスタッフの大切な仕事です。
牛舎の風通しをよくするため、天井には扇風機を設置。床にはふわふわとしたバガスというサトウキビの搾りかすを敷き詰め、適宜、新しいものと交換し、清潔な環境を保ちます。「黒糖の製糖工場から搾りかすのバガスをもらう一方、ここから出る使用済みのバガスは堆肥に。宮古島はエコ アイランドですから、こうしたリサイクルも大切ですよね」。
砂川さんが一番うれしいのは、こうして大切に育てられた宮古牛が、素晴らしい肉質であることが実証されたときなのだとか
宮古牛とは、多良間村を含む沖縄県宮古地域で生産・育成された、登記書と生産履歴証明書を持つ素牛(子牛)を、宮古地域で15カ月以上肥育した黒毛和種の去勢牛や雌牛のことで、去勢牛は生後25~35カ月、雌牛は25~40カ月で出荷されます。つまり、石垣牛と同様に、島の中だけで生まれ育った牛であるため、安心・安全な牛肉としても人気が高まっています。宮古地域で年間5000頭以上の子牛が生まれ、そのうち約8割が県外に、約800頭が沖縄本島に出荷され、残る約200頭だけが宮古牛へと肥育されているのだそうです。
ところで、グルメリポートなどで、ときおり「A5」という肉の等級を耳にしますが、牛肉の規格は、A~Cで表される「歩留まり(ぶどまり)等級」と、1~5で表される「肉質等級」の組み合わせで表示されているのをご存じでしょうか。もっとも健康的な肉付きのものはA、肉質等級は、脂肪交雑12段階、肉色と光沢7段階、肉の締まりときめ、脂肪の色沢と質7段階で判定し、5が最上となるため、最上級クラスの肉はA5等級と表示されるわけです。
宮古牛では、肉質等級4等級以上のものを特選、2、3等級のものを準特選とし、とりわけステーキや焼き肉、しゃぶしゃぶなどの料理は、その肉質や旨味を堪能することができるのだとか。ちなみに、宮古牛は非常に希少なため、宮古島をはじめ沖縄本島の限られた飲食店でしか味わうことができません。
精肉としても、宮古島でも取り扱い店舗が限られ、まさに幻の高級和牛なのです。
レストランなどで「宮古牛」に出会えたら、それはとてもラッキーなこと。
ぜひその機会を逃さず、厳選された極上の味をお楽しみください。